親しい友人の個展を見に日本橋までフミ散歩。
静寂の中、包み込まれるような温もりを感じられる優しい空間でした。今後の展開が楽しみです。
佐藤 忠展 見えないもの、つかめないもの
1月10日(水)→29日(月)
日本橋高島屋 S.C. 本館6階 美術画廊X
佐藤忠(ちゅう)氏は東京藝術大学で鍛金を学び、以降、鉄を主な素材に精緻な技巧を駆使した立体作品を制作する作家です。
自身の記憶の残像をシルエットとして形象化した幾何形態は、錆という時間軸が加わり、シンプルな形の中に無限の広がりと奥行きを感じさせる代表作として注目を集めてきました。
今展では、円形と線状のステンレスを組み合わせ構成された人体の新シリーズを一堂に発表いたします。
コロナというパンデミックによって人類に等しく訪れた脅威。
その衝撃により、人々は自由を奪われ、大きく不安を駆り立てられました。
佐藤氏はそれを機に、人間が抱く「思うようにならない感情や想い」を盛り込んだ、心の拠りどころとなる作品を創造したいと思うようになります。
木で原型を作り、そのアウトラインに沿って大小様々な大きさのステンレスのリングを曲げ、溶接しながら形作られていく人体。
そこに金箔が部分的に散りばめられ、存在していながらも儚げな印象も宿した象徴的な姿が立ち現れます。
その人物像は、重量や質感による彫刻本来の表現とは一線を画し、鑑賞者のイマジネーションと共鳴することで完成した姿となり、精神性や祈りなどの可視化できない概念を、普遍的なメッセージとして人々に発信します。
これまでの重厚な佇まいとは異なる、静謐さと神話性を纏った佐藤忠氏の新たな展開をお楽しみください。